蕁麻疹(じんましん)の原因、症状、慢性蕁麻疹・コリン性蕁麻疹の特徴、治療法について皮膚科専門医が解説。
抗ヒスタミン薬、ゾレア®、デュピクセント®による治療にも対応しています。
蕁麻疹とは
蕁麻疹(じんましん)は、突然皮膚の一部が赤く盛り上がり、強いかゆみを伴う皮膚疾患です。
特徴的なのは、発疹が出現してから数時間以内に消失することで、一つひとつの発疹は通常24時間以内に跡を残さず消えます。その一方で、新しい発疹が次々と現れるため、症状が続いているように見えることがあります。
このように短時間で出現・消退を繰り返す皮膚疾患は非常に特徴的で、蕁麻疹ならではの症状です。
なお、皮膚のより深い部分にむくみ(浮腫)が生じる**血管性浮腫(血管浮腫)**を伴うことがあります。血管性浮腫では、まぶたや唇、手足などが大きく腫れ、症状が2〜3日間持続することもあります。
急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹
蕁麻疹は症状の持続期間によって分類されます。
急性蕁麻疹
発症から1か月以内のものを急性蕁麻疹と呼びます。
風邪などの感染症、薬剤、食物などが誘因となることが多く、比較的短期間で改善することが一般的です。
慢性蕁麻疹
症状が6週間以上続くものを慢性蕁麻疹と呼びます。
慢性蕁麻疹では、原因が特定できないことが多く(特発性蕁麻疹)、日によって症状の強さが変動しながら長期間続くことがあります。
コリン性蕁麻疹とは
コリン性蕁麻疹は、体温上昇や発汗をきっかけに生じる特殊なタイプの蕁麻疹です。
以下のような場面で症状が現れます。
- 運動をしたとき
- 入浴したとき
- 暑い環境にいるとき
- 緊張やストレスを感じたとき
- 辛い食べ物を食べたとき
コリン性蕁麻疹の症状
入浴、運動、精神的緊張などの発汗刺激が引き金となり、直径1〜5mm程度の小さな赤い膨疹(ぼうしん)が多数出現し、強いかゆみやチクチク・ピリピリとした痛みを伴うことがあります。
通常は30分〜1時間程度で自然に消失しますが、重症になると血管性浮腫や気管支喘息を併発してアナフィラキシーショックになることもあります。
小児から30代前半までの若年者に多くみられます。
約65%の方で自己汗皮内テストに対する皮膚反応が陽性になると報告されています。アトピー性皮膚炎と同じように、コリン性蕁麻疹でもMalassezia globosaの菌体成分であるMGL1304に対する特異的IgE抗体が汗中の主要なアレルゲンとされています(汗アレルギー型)。眼瞼の血管性浮腫を伴う重症型はアトピー素因を持つ女性に多く、抗ヒスタミン薬が効きにくくアナフィラキシーを起こすことがあるため注意が必要です。(日皮会誌: 136(2), 123-127,2026)
コリン性蕁麻疹の治療
症状が軽く日常生活に支障がなければ無治療。
中等症以上の場合、治療の基本は抗ヒスタミン薬です。
無効・効果不十分の場合は蕁麻疹診療ガイドラインの治療アルゴリズムにそってステップアップします。
それでも制御不十分の場合について、シクロスポリンやオマリズマブ(コリン性蕁麻疹に対しては保険適応外)がガイドラインで言及されています。(日皮会誌: 136(2), 123-127,2026)
症状が出やすいタイミングの前に内服することで予防効果が期待できる場合もあります。
また、
- 急激な体温上昇を避ける
- 適切な運動習慣を取り入れる
- ストレス管理を行う
といった生活指導も重要です。
蕁麻疹の原因について
蕁麻疹(じんましん)は、皮膚の中にある「マスト細胞」が活性化され、ヒスタミンなどの炎症物質が放出されることで、かゆみや膨疹(皮膚の盛り上がり)が生じる病気です。
誘因として、
- 感染症(風邪など)
- 食物
- 薬剤
- 発汗
- 温度変化
- 圧迫や摩擦
- ストレス
- 疲労
などが知られています。しかし慢性蕁麻疹では、明らかな原因が見つからないことも少なくありません。
近年の研究により、蕁麻疹の発症には「IgE依存性経路」と「非IgE依存性経路」の両方が関与していることが明らかになっています。
IgE依存性経路(アレルギー・自己免疫機序)
食物や薬剤、花粉などによる急性蕁麻疹では、IgE抗体が関与するⅠ型アレルギー反応が知られています。
一方で、慢性蕁麻疹の多くでは原因となるアレルゲンが見つからず、近年では「自己反応性IgE」が病態に関与していることがわかってきました。これは、自分自身の体内成分に対するIgE抗体がマスト細胞を刺激し、蕁麻疹を引き起こす仕組みです。
このような病態を背景として、抗IgE抗体製剤であるオマリズマブ(ゾレア®)が慢性特発性蕁麻疹に高い効果を示すことが知られています。
しかし、一部の患者さんでは血液中のIgE抗体の総量が低く、オマリズマブ(ゾレア®)が効きづらいです。そのような方では、IgG抗体がIgEや高親和性IgE受容体(FcεRI)を刺激し、マスト細胞を活性化させる「自己免疫性蕁麻疹(Type IIb自己免疫)」が関与していると考えられています。シクロスポリンが効果があることがあります。
非IgE依存性経路
慢性蕁麻疹では、IgEを介さないマスト細胞活性化も重要な役割を果たしています。
近年注目されているのが、マスト細胞表面に存在する「MRGPRX2」という受容体です。ストレスや神経刺激に関連する神経ペプチド(サブスタンスPなど)がこの受容体を刺激することで、マスト細胞が活性化されることがわかっています。
そのため、疲労、睡眠不足、精神的ストレスなどが蕁麻疹の悪化要因となることがあります。
また、補体系や凝固系の異常も病態に関与します。補体由来のC3aやC5aはマスト細胞を直接刺激し、さらに凝固系で産生されるトロンビンなども血管透過性を亢進させることで蕁麻疹を悪化させます。
このように、慢性蕁麻疹は単純なアレルギー疾患ではなく、免疫系、神経系、血液凝固系など複数の機序が複雑に関与する全身性の炎症性疾患として理解されるようになってきています。
当院の蕁麻疹治療
当院では、日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン2026」に基づき、症状の程度に応じた段階的治療(ステップアップ療法)を行っています。
*日本皮膚科学会 蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)より転記。

STEP1 抗ヒスタミン薬(第一選択)
蕁麻疹治療の基本となる治療です。
ヒスタミンの作用を抑えることで、かゆみや発疹を改善します。
主に眠気の少ない第二世代抗ヒスタミン薬を使用します。
通常量で効果が不十分な場合は、
- 薬剤の変更
- 用量調整(増量)
を検討します。
図の薬剤は上に行くほど眠くなりにくいです。(日本皮膚科学会 蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)より転記。)

STEP1: 補助的治療の追加
抗ヒスタミン薬のみで十分な効果が得られない場合は、以下の治療を追加します。
H₂受容体拮抗薬
胃薬としても使用される薬ですが、皮膚のヒスタミン受容体にも作用します。
抗ロイコトリエン薬
アレルギー反応に関与するロイコトリエンの働きを抑えます。
気管支喘息やアレルギー疾患にも用いられる薬です。
STEP2 難治性慢性蕁麻疹への対応
STEP1・STEP2でも十分な改善が得られない場合には、以下の治療を検討します。
オマリズマブ(ゾレア®)⇨詳しくはこちら
アレルギー反応に関与するIgE抗体を抑制する注射薬です。
- 月1回(4週おき)の皮下注射
- 保険適用あり
- 慢性特発性蕁麻疹に高い有効性
デュピルマブ(デュピクセント®)
IL-4およびIL-13を阻害する生物学的製剤です。
アトピー性皮膚炎治療薬として広く使用されていますが、蕁麻疹に対する有効性も報告されています。
STEP3 シクロスポリン
免疫反応を抑制する薬剤です。
副作用管理が必要なため、定期的な検査を行いながら慎重に使用します。
*急性増悪時のみ:経口ステロイド(短期使用)
急激な悪化時や重症例で一時的に使用します。
長期使用では副作用のリスクが高まるため、必要最小限の期間にとどめます。

治療の目標
蕁麻疹治療の目標は、発疹やかゆみのない状態を維持し、日常生活に支障のない状態(寛解)を目指すことです。
慢性蕁麻疹は根治が難しい場合もありますが、適切な治療により多くの患者さんで良好なコントロールが可能です。
約半数の方は1年以内に改善し、多くの方は数年以内に症状が軽快するとされています。
症状が落ち着いた後も自己判断で治療を中断せず、医師と相談しながら減薬・終了を検討することが大切です。
よくある質問
蕁麻疹はうつりますか?
蕁麻疹自体は感染する病気ではありません。
蕁麻疹は食べ物が原因ですか?
急性蕁麻疹では食物が原因となることがありますが、慢性蕁麻疹では原因が特定できないことが多くあります。
蕁麻疹は治りますか?
多くの患者さんで時間とともに改善します。適切な治療を継続することで症状を十分にコントロールできます。
長引く蕁麻疹でお困りの方へ
慢性蕁麻疹は、かゆみや発疹によって睡眠や仕事、学業など日常生活の質(QOL)に大きな影響を与える疾患です。
「薬を飲んでもなかなか治らない」「何度も繰り返す」「運動や入浴で症状が出る」などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。